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防災・安全

坂と雪の街・小樽の防災まちづくり

坂の街・小樽で暮らすということ

小樽市議会議員の中村よしひろです。皆さんは、朝の通勤や買い物の帰り道、坂の途中でふと立ち止まり、海を見下ろしたことはありませんか。石狩湾の向こうに暑寒別の山並みが浮かぶあの景色は、全国どこを探しても、小樽でしか見られないものだと私は思っています。

しかし、この美しさを生み出している「坂」と「雪」は、同時に私たち小樽市民にとって暮らしの大きな課題でもあります。急傾斜地に張り付くように建つ家々、冬には屋根からずり落ちる雪、凍てついた路面。愛おしい景色の裏側には、確かに「地形のリスク」が存在します。

今回は、小樽という街の宿命とも言える「急傾斜地」と「豪雪」について、防災まちづくりの視点から皆さんと一緒に考えてみたいのです。

急傾斜地が抱えるリスクと向き合う

小樽市内には、北海道が指定している「土砂災害警戒区域」が数百か所に及びます。これは、崖崩れや土石流などが発生した場合に住民の生命・身体に危害が及ぶおそれがある区域のこと。簡単に言えば「大雨や雪解けで土砂が崩れる可能性のある場所」です。

私自身、議員活動のなかで奥沢や最上、入船といった高台の地域を歩き、住民の皆さんのお話を伺ってきました。

「30年前に家を建てたときはこんな話はなかった。でも、裏の斜面がだんだん心配になってきてね」

そう語ってくださった高齢のご夫婦の言葉が、今も耳に残っています。

何が課題なのか

  • 急傾斜地の多くが民有地であり、擁壁(ようへき=崖を支える壁)の維持管理が所有者任せになっている
  • 高齢化により、斜面の点検や樹木伐採が難しくなっている世帯が増えている
  • 避難路そのものが坂道であり、豪雨時や積雪時に避難が困難になる
  • ハザードマップを「見たことがない」という市民が依然として一定数いる

私の提言:まずは、市として急傾斜地対策工事への補助制度の拡充を検討すべきだと考えています。あわせて、ハザードマップの戸別配布だけでなく、町会単位での「わが町のリスクを歩いて確かめる会」のような取り組みを市が後押しできないか。机上の地図ではなく、自分の足で確かめることが本当の防災の第一歩ではないでしょうか。

豪雪との共存——除排雪の現場から

小樽の年間降雪量は、平年で約5メートル。これは札幌の約1.2倍にあたります。しかも、海からの湿った雪は重く、屋根に積もれば1平方メートルあたり数百キロの荷重になることもあります。

除排雪への市民の皆さんからのご意見は、私のもとに最も多く寄せられるテーマの一つです。「交差点の雪山で見通しが悪い」「排雪が入らず路地が一車線になっている」「高齢世帯で間口の雪処理ができない」——。どれも切実な声です。

豪雪がもたらす複合リスク

私がとくに危惧しているのは、雪が「他のリスクを増幅させる」という点です。

  • 積雪で消火栓が埋もれ、火災発生時の初動が遅れる
  • 狭くなった道路に救急車や消防車が入れない
  • 屋根の雪下ろし作業中の転落事故(小樽でも毎冬のように発生しています)
  • 春先の急激な雪解けによる、急傾斜地の地盤緩み

つまり、雪は単独の問題ではなく、火災・救急・土砂災害とすべて地続きなのです。

私の提言:除排雪予算の安定確保はもちろんですが、それだけでは追いつきません。高齢世帯への雪下ろし支援制度の対象拡大、消火栓・避難路の「見える化」(目印の設置)、そして民間事業者や町会と連携した「地域除雪パートナーシップ」の仕組みづくりを、具体的に進めていくべきだと考えています。

地域で支え合う防災まちづくりへ

行政ができることには、正直に申し上げて限界があります。市の職員が一軒一軒の屋根の雪を下ろすことはできませんし、崖の点検を24時間続けることも不可能です。

では、どうするか。私は「自助・共助・公助」のバランスをもう一度組み直す時期に来ていると感じています。とくに「共助」——つまり、ご近所同士で支え合う力——をどう育てるかが鍵です。

私が大切にしたい三つの視点

  • 顔が見える関係づくり:町会・自治会活動への支援を強化し、「隣に誰が住んでいるかわからない」状態をなくす
  • 要支援者名簿の実効性:名簿を作って終わりではなく、実際に誰が声をかけに行くのかまで決めておく
  • 学校教育との連携:子どもたちが地域の地形や災害史を学び、家庭に持ち帰って話題にしてもらう

私は先日、ある町会の防災訓練にお邪魔しました。参加されていた80代の女性が、小学生の男の子に避難経路を教えている姿を見て、胸が熱くなりました。これこそが、小樽の防災の原風景ではないでしょうか。

それでも、私はこの街が好きだ

急傾斜地があるから、海と街を見下ろす絶景がある。豪雪があるから、春の雪解けと夏の緑があれほど鮮やかに感じられる。小樽の地形リスクは、小樽の魅力の裏返しでもあります。

もちろん、「不便だから」「危ないから」と街を離れていく若い世帯があることも、私は現実として受け止めています。人口減少のなかで、どう安全で住み続けられる街にしていくか。これは私たち議員に課せられた、重い宿題です。

それでも私は、この坂の街が好きです。朝、手宮の方から昇る朝日。冬の夜、雪に反射するガス灯の光。重い雪をかいた後に、ご近所さんと交わす「お疲れさま」の一言。これらすべてが、小樽でしか味わえない暮らしの豊かさだと信じています。

防災は、「万が一のため」だけのものではありません。安心して暮らせるという土台があってこそ、人は街を愛し、次の世代にその愛情を手渡していけるのだと思います。

皆さんのご家庭では、ハザードマップはどこにしまってありますか。お隣のお宅の方のお顔を、思い浮かべられますか。小さな問いかけから、小樽の防災まちづくりは始まります。私もその歩みの先頭に立ち続けることをお約束し、今回のコラムを閉じたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんのご意見・ご提案を、いつでもお待ちしています。

中村よしひろ

中村よしひろ

小樽市議会議員

1972年小樽市生まれ。市民の声を市政に届けるため、日々議会活動と地域活動に取り組む。小樽の歴史・文化・自然を愛し、住み続けたいまちづくりを目指している。