数字が語る、小樽のいま
こんにちは、小樽市議会議員の中村よしひろです。今日は少し重たい、けれどもどうしても市民のみなさんと一緒に考えたいテーマについてお話しさせてください。それは、小樽の「人口減少」の問題です。
まず、数字を正直にお伝えします。小樽市の人口は、1964年の約20万7千人をピークに、現在はおよそ10万6千人(2024年時点)。ピーク時の約半分です。毎年、約2,000人ずつ減り続けています。これは、小さな町がひとつ消えていくほどの規模です。
この話をすると、「もう小樽はダメなのか」と肩を落とされる方がいらっしゃいます。先日、南小樽の喫茶店で80代のご婦人からこう言われました。「中村さん、私が子どもの頃は、花園銀座通りを歩くのに肩がぶつかるほどだったのよ」と。その寂しさは、私もまったく同じように感じています。
でも、私はこう思うのです。人口が減ることと、まちが幸せでなくなることは、イコールではないのではないか、と。
「減ること」は「終わること」ではない
日本全体の人口が減っていくなかで、小樽だけが例外的に増えることは、残念ながら現実的ではありません。もちろん、移住促進や子育て支援を全力で進めることは必要です。しかし同時に、私たちは「人口が減っても、ちゃんと幸せに暮らせるまちのかたち」を真剣に考え始めなければならない時期に来ています。
これは「あきらめ」ではありません。むしろ逆です。「増やすこと」だけを目標にしていると、増えなかったときに全部が失敗に見えてしまう。でも、「10万人でも、8万人でも、笑顔で暮らせるまち」を目指すなら、私たちはこれからも前を向いていけるのです。
人口減少がもたらす「本当の課題」
人口が減ることで、具体的に何が困るのでしょうか。整理してみます。
- 税収が減り、道路・水道・学校などの維持が難しくなる
- バスや病院など、暮らしに必要なサービスの維持が難しくなる
- 空き家が増え、まちの景観や安全が損なわれる
- 働き手が減り、商店や事業者の後継者が見つからない
- 高齢の方の見守りや介護を支える人が足りなくなる
これらは、放っておけば確実に深刻化します。しかし、ひとつひとつは「打つ手」のある課題でもあるのです。
小さくても、豊かに暮らせるまちへ
そこで私が提案したいのが、「コンパクトで、つながりのあるまち」という考え方です。難しそうに聞こえるかもしれませんが、要はこういうことです。
人口に合った「ちょうどいい大きさ」のまちをつくり、歩いて暮らせる範囲に、必要なものがそろっている。そんな暮らしをめざそう、ということです。
小樽には、幸いなことに、こうしたまちづくりに向いた土地柄があります。中心市街地、南小樽、手宮、朝里——それぞれが昔から独自の暮らしの圏を持ってきました。無理に全体を一つにまとめるのではなく、それぞれの地域が「小さな拠点」として機能し、公共交通でつながっていく。そういう姿が描けるのではないでしょうか。
具体的に進めたい三つのこと
私が議会で提案し、これからも力を入れていきたいのは、次の三つです。
- 空き家の活用促進——市内には4,000戸を超える空き家があるとされています。これを「負の遺産」ではなく、若い世代の住まいや、小商いの拠点に変えていく仕組みづくりを進めたい。
- 地域公共交通の再設計——バス路線の減便は切実な問題です。乗合タクシーやデマンド交通など、人口規模に合った新しい移動手段を、地域ごとに合うかたちで整えていくべきだと考えます。
- 地域の居場所づくり——高齢の方も子どもも気軽に立ち寄れる「小さな拠点」を各地域に。カフェでも、集会所でも、商店の一角でも構いません。顔の見える関係こそが、人口減少社会の最大の支えです。
若い世代が「帰ってきたい」と思えるために
先日、札幌の大学に通う小樽出身の学生さんと話をする機会がありました。彼女はこう言いました。「小樽は大好きです。でも、帰って働ける場所があるかというと、正直わからなくて」。
この言葉を、私は忘れることができません。小樽を嫌いになって出ていくわけではないのです。「帰りたいのに、帰れない」。この構造を変えなければ、どれだけ観光でにぎわっても、まちの土台は細っていきます。
テレワークが広がった今、小樽は実は大きなチャンスを持っています。札幌へ30分、新千歳空港まで直通、海と山がすぐそば。暮らしの質で勝負できるまちです。空き店舗を活用したコワーキングスペースの整備、創業支援、子育て環境の充実——若い世代が「ここで働き、ここで子どもを育てたい」と思える条件を、ひとつひとつ整えていきたい。
私は、人口減少を「縮小」としてではなく、「再編」としてとらえ直したいのです。小樽という宝物をどう次の世代に手渡すか。そのための、前向きな知恵の時間なのだと思います。
私が小樽を愛する理由
最後に、少し個人的なことをお話しさせてください。
私はなぜ、こんなにも小樽のことばかり考えているのか。それはやはり、このまちが好きだからです。朝の港から立ちのぼる海霧、冬の運河に灯るガス灯、坂の上から見える石狩湾の青、お寿司屋さんのご主人の無骨な優しさ、祭りの夜の潮まつりの熱気——数え上げたらきりがありません。
小樽は、ただ古いまちではありません。かつてニシン漁や北前船で栄え、北海道の金融・物流の中心として大きく発展し、そして今、観光と暮らしのまちとして新しい顔を見つけようとしている。何度も時代の荒波を越えてきた、したたかで、しなやかなまちなのです。
だから私は、小樽の未来を悲観しません。人口は減るかもしれない。でも、小樽の価値は減りません。むしろ、人口が増えることだけを追いかけていた時代には見えなかった「本当の豊かさ」が、これから見えてくるのではないかと信じています。
みなさんはどう思われますか。小樽の10年後、20年後を、どんなまちにしたいですか。ぜひ、まちで見かけたら声をかけてください。市民のみなさんの声こそが、私のいちばんの力です。
長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。また次回、お会いしましょう。
