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地域医療

小樽の坂道と医療格差——地域医療を守る取り組み

坂の街で、医療を考える

先日、入船の坂道を歩いていたときのことです。手すりにつかまりながら、ゆっくり、ゆっくりと坂を上がっていくおばあちゃんにお会いしました。「病院に行くのが、年々しんどくなってねえ」とこぼされたその言葉が、私の胸にずっと残っています。

小樽の美しい坂道は、観光客の皆さんにとっては情緒ある風景かもしれません。けれど、ここで暮らす高齢の方々にとっては、病院までの道のりが文字通り「険しい道」になりつつあるのです。

私、中村よしひろは、この坂の街で育ちました。小樽運河のきらめき、祝津の海の匂い、天狗山から見下ろす夜景——どれも私の宝物です。だからこそ、この街で安心して年を重ねられる仕組みを、どうしてもつくりたい。今回は、小樽の地域医療について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

数字で見る小樽の医療の現実

まず、現実を見つめることから始めましょう。小樽市の人口は、ピーク時の約20万7千人から現在は約10万7千人ほどに。半世紀でおよそ半減しています。そして高齢化率は約40%。これは全国平均(約29%)を大きく上回る数字です。

一方で、小樽市内の医師数は人口10万人あたりで見ると全国平均より少なく、特に小児科・産婦人科・救急を担う医師の確保は深刻な課題となっています。市立病院をはじめとした医療機関の先生方は、本当に懸命に頑張ってくださっていますが、その現場は決して楽ではありません。

小樽の医療が抱える三つの課題

  • 医師の高齢化と後継者不足——地域の診療所の中には、院長先生が引退された後、継ぐ医師がいないケースも増えています
  • 診療科の偏り——特に夜間・休日の小児医療、産科医療の確保が綱渡りの状況
  • 通院の困難さ——坂と雪、そして公共交通の縮小が、高齢者の受診を阻んでいます

なぜ医師は小樽に来にくいのか

「どうして小樽の医師不足は解消されないのか」——市民の方からよく聞かれる質問です。札幌から電車で30分あまり。決して僻地というわけでもないのに、なぜでしょうか。

理由はいくつかあります。札幌という大都市が近接しているため、勤務医も開業医も札幌圏に集中しやすい。研修医にとって症例数の多い大規模病院が魅力的に映る。そして、小樽で開業したくても、医療機器への投資や後継者問題を考えると二の足を踏む——。こうした構造的な問題が重なっているのです。

つまり、医師不足は「誰かが悪い」という話ではありません。だからこそ、行政と医療機関、そして市民が知恵を出し合って、この街に医師が残りたくなる、来たくなる仕組みをつくる必要があるのです。

私が考える、小樽の医療を守る四つの柱

私がこれまで議会で訴えてきた、そしてこれからも訴え続けていきたい取り組みをご紹介します。

① 医師確保のための奨学金・研修支援の拡充

小樽にゆかりのある医学生、あるいは小樽で働きたいと考える若手医師に対して、奨学金や研修環境のサポートを厚くする仕組みが必要です。「小樽で医師として育ち、小樽で患者さんと向き合う」——そんなキャリアパスを市として応援できないか。北海道大学や札幌医科大学との連携も、もっと深めていきたいと考えています。

② 市立病院を核とした医療ネットワークの強化

市立小樽病院は、この街の医療の最後の砦です。ここが機能してくれるからこそ、民間のクリニックや在宅医療も成り立っています。経営の健全化と同時に、救急・急性期医療の体制を守り抜くこと。そして、民間医療機関との役割分担をより明確にし、無駄なく患者さんを支える仕組みをつくること。これは待ったなしの課題です。

③ 「通える医療」から「来てもらえる医療」へ

坂と雪の街で、高齢の方が病院まで通うのは本当に大変です。訪問診療・訪問看護の体制を充実させ、オンライン診療も活用しながら、「医療のほうが暮らしに寄り添う」形を広げていきたい。地域包括ケアシステムの中で、医師、看護師、ケアマネジャー、民生委員さんが連携する仕組みを、もっと目に見える形で整えていく必要があります。

④ 通院を支える交通の仕組み

医療の話は、実は交通の話でもあります。路線バスの維持、乗合タクシーの導入、通院バスの運行——こうした「足」の確保なしに、医療格差の是正はありえません。福祉と交通と医療を縦割りではなく、横串で考える発想が、小樽には必要だと私は考えています。

市民の皆さんと一緒に育てる医療

ここで一つ、皆さんにお伝えしたいことがあります。地域医療は、行政や医師だけが守るものではありません。市民一人ひとりの「かかり方」もまた、大切な一部なのです。

かかりつけ医を持つこと。軽い症状のときに救急外来に殺到しないこと。健診を受けること。地域の医療従事者に「ありがとう」と伝えること。——こうした小さな積み重ねが、医療を守る大きな力になります。

私も議員として、医療機関を回り、現場の声を聞くたびに、「もっと市民に知ってほしい」と痛感することがたくさんあります。情報を伝えること、対話の場をつくること。これも私の大切な仕事だと思っています。

それでも、私は小樽で生きていきたい

正直に申し上げます。小樽の医療課題は、一朝一夕には解決しません。人口減少、財政制約、全国的な医師偏在——難しい要素が幾重にも絡み合っています。

それでも、私はこの街が好きです。朝の港町の静けさ、冬の雪あかりの温もり、商店街で交わされる何気ない挨拶。この風景の中で、生まれ、育ち、年を重ね、最期を迎える——そういう当たり前の人生を、小樽で全うできる街であってほしい。そのために医療は、絶対に守らなければならない土台です。

冒頭でお話しした、坂道のおばあちゃんの顔が、今も浮かびます。あの方が、そして皆さんが、「小樽で暮らしていてよかった」と心から思える日々を守るために、私は議会で、現場で、地域で、地道に声を上げ続けていきます。

どうか、皆さんの声を聞かせてください。「うちの地域には病院が遠い」「夜に子どもが熱を出したとき不安だった」——そんな一つひとつの声が、政策を動かす力になります。小樽の医療を、一緒に守っていきましょう。

この街を愛する一人として、議員として、私はここに立ち続けます。

中村よしひろ

中村よしひろ

小樽市議会議員

1972年小樽市生まれ。市民の声を市政に届けるため、日々議会活動と地域活動に取り組む。小樽の歴史・文化・自然を愛し、住み続けたいまちづくりを目指している。