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子育て・教育

小樽の学校統廃合問題——子どもの学びと地域の絆を考える

閉校の日、子どもたちの背中を見送って

数年前のことです。市内のある小学校の閉校式に参列させていただきました。体育館には卒業生、地域の方々、そして最後の在校生たちが集まり、校歌を歌っていました。白髪のご年配の方が、小学生と一緒に、少し震える声で歌っておられた姿を、私は今でも忘れることができません。

式の後、校門の前で一人のおばあちゃんがぽつりと言いました。「ここで孫も、娘も、私も学んだんだよ」。その一言には、三世代にわたる記憶と、言葉にならない寂しさが詰まっていました。

学校が閉じるということは、建物がなくなるということではありません。地域の記憶が、ひとつ閉じられるということなのだと、私はあの日、肌で感じたのです。

数字が語る小樽の現実

一方で、私たちは厳しい現実から目をそらすこともできません。小樽市の人口は、ピーク時の昭和39年(1964年)には約20万7千人を数えました。しかし現在は約10万5千人。実に半減しているのです。

子どもの数はさらに深刻です。市内の小中学生の数は、この20年で大きく減少しました。学年に1クラスしかなく、しかもそのクラスが10人に満たない、という学校も複数あります。

小樽市の学校数は、平成の初めには小中学校合わせて50校を超えていました。それが現在では、統廃合を経て大きく数を減らしています。この20〜30年、小樽の教育環境は静かに、しかし確実に変わり続けてきたのです。

皆さんは、どう感じられるでしょうか。「仕方がない」と思われる方もいれば、「寂しい」と感じられる方もいるでしょう。私自身、この数字を前にすると、議員として、そして一人の小樽人として、立ち止まらずにはいられません。

統廃合は「悪」なのか、それとも「必要」なのか

学校統廃合の議論になると、しばしば「賛成か反対か」という二項対立になりがちです。しかし、私はそれでは本質を見失ってしまうと考えています。

大切なのは、「子どもたちにとって何が一番良いのか」という視点ではないでしょうか。

小規模校の良さ

  • 一人ひとりに教員の目が行き届きやすい
  • 異学年との交流が自然に生まれる
  • 地域との結びつきが強く、見守りの目が多い
  • 子どもが「自分の居場所」を感じやすい

一方で生じる課題

  • クラス替えがなく、人間関係が固定化しやすい
  • 集団でのスポーツや合唱などの経験が限られる
  • 多様な価値観に触れる機会が少なくなる
  • 教員の負担が増え、専門性のある指導が難しい場合がある

どちらにも、良さと課題があります。だからこそ、「統廃合=悪」でも「統廃合=善」でもなく、一校一校、地域ごとに、丁寧に対話を重ねていく必要があるのです。

学校が消えると、地域はどう変わるのか

私が議員として歩いてきた中で痛感しているのは、学校は単なる教育施設ではないということです。

運動会には地域の方が集まり、学芸会では祖父母が涙ぐみ、避難訓練では町会と協力し、災害時には避難所になる。登下校の子どもたちの声は、商店街のおじいちゃんおばあちゃんにとって、何よりの元気の源です。

「子どもの声が聞こえなくなった町は、年を取るのが早くなる気がするんだ」——以前、ある町会長さんがぽつりと言われたこの言葉が、ずっと私の胸に残っています。

学校がなくなると、通学路の見守りも減り、地域行事の担い手も減り、若い世代がその地域に住む理由のひとつが失われます。これは数字では測れない、しかし確実に起こる変化です。

だからこそ、仮に統廃合が避けられない場合でも、「学校がなくなった後の地域をどう支えるか」という視点が絶対に必要だと、私は考えています。

私が考える、これからの小樽の学校のかたち

では、具体的にどうすればよいのか。私なりに、いくつかの提案をお示ししたいと思います。

1. 統廃合の「前」の対話を厚くする

結論ありきの説明会ではなく、保護者・地域・子ども自身が参加できる対話の場を、時間をかけて設けること。急がば回れ、です。

2. 跡地活用を「地域の資産」として考える

閉校した校舎を単に解体するのではなく、地域コミュニティの拠点、子育て支援施設、高齢者の居場所、観光資源など、小樽らしい活用方法を地域と一緒に考えていくこと。市内にも、閉校を活用した素敵な事例がいくつも生まれ始めています。

3. 通学の負担を本気で軽減する

坂の多い小樽で、統合によって通学距離が延びる子どもの負担は深刻です。スクールバスの充実、冬道の安全対策、小さな子にも配慮した通学支援を、「おまけ」ではなく「本体」として整えること。

4. 統合しない選択肢も残す

小規模校であっても、ICTの活用や他校との合同授業など、工夫次第で学びの質は保てます。「統合ありき」ではなく、「残す」という選択肢も含めて議論する柔軟さを持ちたいと思います。

教育は、未来への最大の投資です。目先のコストだけで判断すれば、必ず後悔します。かといって、感情だけで現実から目を背けても、子どもたちにしわ寄せが行きます。冷静な頭と、温かい心。その両方が、今の小樽には求められていると私は信じています。

最後に——子どもたちに何を手渡すのか

私が小樽という街を愛してやまない理由は、たくさんあります。運河の夕暮れ、天狗山から見下ろす夜景、潮の香り、祝津の海、手宮線跡の桜。けれど一番の理由は、やはり「人」です。

雪かきを手伝ってくれる隣のおじさん、通学路で声をかけてくれる商店街の皆さん、学校行事に汗を流してくれるPTAや町会の方々。この街には、人と人とがゆるやかにつながる温かさが、まだ確かに残っています。

その温かさを育ててきたものの一つが、間違いなく、地域の学校だったのだと思います。

人口が減っていくこの街で、私たちは何を残し、何を変えていくのか。学校統廃合の問題は、小樽の未来そのものを問う問題だと、私は受け止めています。

どうか皆さんの声を、聞かせてください。お子さんのいる方も、お孫さんがいる方も、子育てを終えた方も、これから親になる方も。立場が違えば見える景色も違います。その違う景色を持ち寄ることでしか、本当に良い答えは生まれないと、私は思うのです。

子どもたちに、どんな小樽を手渡したいですか。——その問いを、どうか一緒に考えてください。私も議員として、一人の小樽人として、精一杯考え、動き続けます。

中村よしひろ

中村よしひろ

小樽市議会議員

1972年小樽市生まれ。市民の声を市政に届けるため、日々議会活動と地域活動に取り組む。小樽の歴史・文化・自然を愛し、住み続けたいまちづくりを目指している。