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ある日、商店街で聞いた「ただいま」
先日、都通り商店街を歩いていたときのことです。あるお店の前で、若いご夫婦が店主さんに「ただいま帰りました」と声をかけていました。聞けば、数年前に東京から小樽へ移住してきたご夫婦で、年に数回は東京の実家に戻るけれど、小樽に帰ってくるときに「ただいま」と言える場所があるのが本当にうれしい、と話してくださいました。
私はその光景に、しばらく足を止めてしまいました。生まれた土地ではなくても、「ここが自分の帰る場所だ」と思える——それこそが、小樽という街が持っている、お金では買えない大きな財産ではないでしょうか。
今回は、小樽の未来を考えるうえで欠かすことのできない「移住者」と「関係人口」というテーマについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
移住者・関係人口とは何か——数字で見る小樽
まず、言葉の整理から始めさせてください。「移住者」は文字どおり、他の地域から小樽に住まいを移してきた方々のことです。一方「関係人口」とは、観光でちょっと立ち寄るのでもなく、住民として暮らすのでもない、その中間に立って、継続的に地域と関わってくれる人たちのことを指します。
小樽の人口は、ピーク時の昭和39年には約20万7千人を数えました。しかし現在はおよそ10万6千人。この60年ほどで、人口はほぼ半分になりました。少子高齢化も進み、65歳以上の方の割合は4割を超えています。これは、正直に受け止めなければならない現実です。
では、絶望すべき数字でしょうか。私はそうは思いません。なぜなら、同じ時期に、小樽には静かに、しかし確実に、新しい動きが生まれているからです。
- 若い世代のカフェやギャラリーのオープンが、色内・堺町周辺で続いていること
- テレワークを機に移住してきたエンジニアやクリエイターの方々が増えていること
- 首都圏の学生が、まちづくりの研究やインターンで繰り返し小樽を訪れていること
- 「小樽が好きで、年に何度も通っている」という熱心なファンの存在
これらはすべて、人口統計の数字には表れません。けれど、街の空気を確かに変えているのです。
小樽を選んでくれる人たちが教えてくれること
議員活動のなかで、移住してきた方々とお話しする機会がたびたびあります。私がいつも尋ねるのは、「どうして小樽を選んでくれたんですか?」ということです。
返ってくる答えは、驚くほど似ています。
「坂の上から海が見える景色に、心を奪われました」
「古い建物を活かしながら、新しいお店が生まれている空気が好きです」
「札幌にも近いのに、小樽には小樽の時間が流れていて、心が落ち着きます」
「人との距離感が、ちょうどいい。放っておかれすぎず、干渉されすぎず」
私はこうした声を聞くたびに、ハッとさせられます。小樽に生まれ育った私たちは、運河も、ガス灯も、天狗山から見下ろす夜景も、どこか「当たり前」のものとして見過ごしてしまいがちです。けれど、外から来てくださった方々の眼差しは、小樽の本当の価値を、もう一度私たちに教えてくれる鏡のような存在なのです。
「来てもらう」から「関わり続けてもらう」へ
これまでの地域政策は、どうしても「移住者を何人増やしたか」という定住者の数で成果を測る傾向がありました。もちろん、人口を維持することは大切です。しかし私は、これからの小樽が目指すべきは、もう一歩先の地点ではないかと考えています。
それは、「小樽に住んでいなくても、小樽のために何かしたい」と思ってくれる人を、どれだけ増やせるかということです。
たとえば、二拠点生活をしながら小樽の空き家を改修してシェアスペースにしてくれる方。年に数回訪れて、祭りの運営を手伝ってくれる方。遠く離れた土地から、ふるさと納税で小樽の子どもたちを応援してくれる方。SNSで小樽の魅力を発信し続けてくれる方。みなさん、立派な「小樽の仲間」です。
私が考える、三つの具体的な提案
市議会議員として、私は次のような取り組みを進めていくべきだと考えています。
- 空き家バンクの刷新と伴走支援——物件情報を載せるだけでなく、改修相談、移住後の暮らしの不安まで、ひとつの窓口で寄り添える体制を。
- 「小樽サポーター制度」の創設——市外に住みながら小樽と関わりたい方が、イベント参加や情報受信を通じて継続的につながれる仕組みを。
- 学生との長期的な関係づくり——市内外の大学と連携し、小樽をフィールドにした学びの機会を広げ、卒業後も関係が続く土壌を。
どれも華やかな政策ではないかもしれません。けれど、こうした地道な設計こそが、10年後、20年後の小樽を支える土台になると信じています。
市民一人ひとりができる「ゆるやかな歓迎」
行政の仕組みと同じくらい大切なのが、私たち市民一人ひとりの姿勢ではないでしょうか。
移住してきた方々に話を聞くと、嬉しかったこととして挙げられるのは、意外と小さなことです。ゴミ出しのルールを隣の方が優しく教えてくれたこと。商店街の店主さんが名前を覚えてくれたこと。町内会の集まりに「無理のない範囲でね」と誘ってくれたこと。
一方で、少し寂しかったという声も聞きます。「よそ者」として一線を引かれているように感じた、という声です。もちろん、昔からのご近所同士の関係も大切な宝物です。でも、その輪のなかに、新しく来た方が自然に加われる「ゆるやかな隙間」を、少しだけ空けておく。それだけで、小樽という街の印象は大きく変わります。
難しいことではないと思うのです。「どちらから来られたんですか?」と一言声をかける。それだけでも、十分な歓迎になります。
小樽の未来は、小樽を愛する人の総和でできている
私が小樽を好きな理由を、改めて考えてみました。坂道も、海の匂いも、冬の雪あかりも、どれも大切です。でも一番の理由は、ここに暮らす人、ここに関わる人の「小樽への想いの深さ」ではないかと思っています。
生まれ育った方の想い。移住してきた方の想い。遠くから応援してくれる方の想い。そのひとつひとつが重なり合って、小樽という街の輪郭をかたちづくっています。
人口の数字だけを見れば、確かに厳しい現実があります。けれど、「小樽を好きだ」と言ってくれる人の数で測るならば、この街の可能性はまだまだ大きく広がっているはずです。
皆さんのまわりには、最近小樽に越してきた方はいらっしゃいますか。あるいは、札幌や東京に住みながら、小樽を気にかけてくれているお知り合いはいませんか。もしよろしければ、今度その方に、こう声をかけてみてください。
「小樽へようこそ」、あるいは「小樽のこと、気にかけてくれてありがとう」。
その一言から始まる関係こそが、これからの小樽をつくっていくのだと、私は信じています。私もまた、一人の市民として、一人の市議会議員として、この街を愛するすべての人の「ただいま」と言える場所を守り、育てていきたい。そう心から願っています。
