← コラム一覧
財政・行政

市民の税金はどこへ?小樽市の財政状況を考える

一枚の請求書から考えること

先日、ある市民の方から「中村さん、うちに届いた固定資産税の納付書を見てね、ふと思ったんですよ。この私のお金、いったい何に使われているんだろうって」とお声をいただきました。手稲山を望む住宅街の、ごく普通のお茶の間での会話です。

この問いこそ、私たち政治に関わる者が最も真摯に受け止めなければならないものだと思っています。皆さんが汗を流して働き、年金から、商いの売上から納めてくださる一円一円。それをどう使うかを決めるのが、市政であり、市議会の役割です。

今日は少し堅いテーマですが、小樽市の財政について、できるだけわかりやすくお話ししたいと思います。

小樽市の財政、いまどこにいるのか

まず現実からお伝えしなければなりません。小樽市の財政は、決して楽観できる状況にはありません。

人口減少という大きな波

小樽市の人口は、ピーク時の昭和39年には約20万7千人でした。それが今は約10万6千人。実に半分近くまで減ってしまいました。人口が減るということは、市税収入が減るということでもあります。

一方で、面積は変わりません。道路、水道、学校、消防——これらを維持する費用はそう簡単には減らせないのです。「少ない人数で、同じ広さの街を支える」。これが小樽が直面している構造的な課題です。

老朽化する街のインフラ

港町として栄えた小樽には、戦後から高度経済成長期にかけて整備された施設がたくさんあります。学校、市営住宅、水道管、橋梁……。これらが一斉に更新時期を迎えています。

皆さんにぜひ知っていただきたいこと

市の予算約600億円のうち、民生費(福祉関連)が約4割を占めています。高齢化が進むなかで、これはむしろ当然のこと。しかし同時に、投資的経費——つまり未来への投資に回せるお金は限られているのが現実です。

「選ぶ」ということの重み

財政を語るとき、よく「あれもこれも」という議論になりがちです。けれども、私はあえて申し上げたい。限られた財源のなかでは、「選ぶ」勇気こそが政治の仕事だと。

何かを優先するということは、何かを後回しにするということでもあります。それは痛みを伴う決断です。だからこそ、その判断の過程を市民の皆さんにきちんとお示しし、ご意見をいただきながら進めていく——これが私の信条です。

税金とは「市民からお預かりしているもの」。自分のお金のつもりで使う議員や職員がいたら、それは根本から間違っている。私は常にそう自分に言い聞かせています。

私が優先したい三つのこと

では、何を優先すべきか。私なりの考えを三つ、お示しします。もちろんこれが唯一の正解ではありません。皆さんのお考えをぜひお聞かせください。

一つ目:子どもたちへの投資

小樽の未来は、今この街で育つ子どもたちにかかっています。学校施設の計画的な改修、放課後の居場所づくり、子育て家庭への経済的支援。少子化のなかで一人ひとりの子を大切に育てることは、将来の小樽を支える何よりの投資だと考えています。

二つ目:暮らしの基盤を守ること

  • 冬の除雪体制の維持と改善
  • 老朽化した水道管の計画的な更新
  • 坂のまち小樽ならではの、お年寄りの移動支援
  • 医療・介護の持続可能な体制づくり

派手ではありませんが、こうした「あたりまえの暮らし」を守ることこそ、自治体の第一の仕事です。

三つ目:稼ぐ力を育てる

削るばかりでは街は萎んでしまいます。観光、港湾、水産、そして近年注目される移住・リモートワーク需要。小樽の持つ唯一無二の魅力を活かして「稼ぐ」仕掛けづくりに、私は希望を見出しています。小さな投資が、将来の税収という形で返ってくる。そういうお金の使い方も必要です。

透明性こそ、信頼の土台

財政で最も大切なのは、「見える化」だと私は考えています。

市の予算書は分厚く、専門用語も多く、正直なところ市民の皆さんが気軽に目を通せるものではありません。だからこそ、議員である私たちが「翻訳者」の役割を果たさなければなりません。

「この事業に○○万円、理由はこれこれ」「この施設の維持に年間○○万円かかっています」——そうした情報を、わかりやすく、こまめにお伝えしていく。地味な作業ですが、信頼はこの積み重ねの先にしか生まれないと信じています。

皆さんの街のことを、皆さんが知らないままに決まっていく——そんな市政であってはならないと思うのです。

小樽を愛するからこそ、現実を見つめたい

私は小樽が好きです。運河に映る夕暮れ、天狗山から見下ろす湾のきらめき、潮の香り混じる商店街の活気、冬の朝のきりりとした空気。この街で生まれ育ち、この街で生きていく人々の顔が思い浮かぶからこそ、私は政治家という仕事を選びました。

好きだからこそ、きれいごとだけでは語れません。財政が厳しい、人口が減る、インフラが古い——目を背けたくなるような現実もあります。けれど、現実を直視することと、未来を諦めることは違います。

かつて小樽は、北の商都として日本の経済を動かしていました。先人たちは、何もないところから石造りの街を築き上げたのです。あのバイタリティは、きっと今の私たちのなかにも流れています。

皆さんが納めてくださった税金を、一円たりとも無駄にしない。そして、未来の小樽っ子たちに「ちゃんと考えて使ってくれたんだな」と言ってもらえるような、そんな使い方を選び取っていきたい。

最後に、冒頭の市民の方への答えをお返しするとすれば——「あなたのその一枚の納付書は、間違いなく小樽の未来を形づくる力になっています。だから私たちは、その重みに応える責任があるのです」。

皆さんのお声を、どうぞこれからもお聞かせください。坂道を上りながらでも、商店の店先ででも、どこへでも伺います。この街を一緒に守り、育てていきましょう。

中村よしひろ

中村よしひろ

小樽市議会議員

1972年小樽市生まれ。市民の声を市政に届けるため、日々議会活動と地域活動に取り組む。小樽の歴史・文化・自然を愛し、住み続けたいまちづくりを目指している。