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コミュニティ

商店街の灯を絶やさない——小樽の地域再生戦略

シャッターの向こうに、たしかに灯っていたもの

先日、都通りを歩いていたときのことです。長らくシャッターが下りていた一軒のお店の前で、年配のご婦人が足を止め、しばらくじっと眺めておられました。思い切って声をおかけすると、「ここね、昔は洋品店でね、娘の七五三の着物をここで仕立ててもらったのよ」と、懐かしそうに教えてくださいました。

私はそのとき、商店街というのは単に「物を売り買いする場所」ではないのだと、改めて気づかされました。そこには、家族の記憶があり、ご近所さんとの立ち話があり、季節のうつろいとともに過ごしてきた人生そのものがある。シャッターが一枚下りるということは、そうした記憶の受け皿がひとつ失われることでもあるのです。

私が小樽を愛してやまない理由のひとつは、こうした「人の温度」が街のあちこちに染み込んでいることにあります。だからこそ、商店街の灯を絶やしてはならないと、強く思うのです。

数字で見る小樽中心部の現実

とはいえ、思いだけでは街は守れません。まずは現実を直視する必要があります。小樽市の人口は、ピーク時の約20万7千人から、現在はおよそ10万6千人へと半減しました。中心市街地の歩行者通行量も、長期的に減少傾向が続いています。

小樽中心部が抱える主な課題

  • 商店街の空き店舗率の上昇と、後継者不足による廃業
  • 観光客で賑わうエリアと、地元客が通う商店街との「分断」
  • 高齢化による「買い物困難」の広がり
  • 物件の権利関係が複雑で、新規出店のハードルが高い

とくに私が気がかりなのは、観光地としての小樽と、暮らしの場としての小樽の間に、少しずつ距離が生まれているのではないか、ということです。運河沿いやメルヘン交差点は多くの観光客で賑わっていますが、少し歩けば静まり返った通りがある。この「落差」をどう埋めていくかが、再生の鍵だと私は考えています。

「賑わい」と「暮らし」は両立できるのか

皆さんはどう感じていらっしゃるでしょうか。観光は小樽の大切な産業です。しかし、観光客向けのお店ばかりが増えて、地元の方が日常の買い物に行ける店が減ってしまっては、本末転倒ではないでしょうか。私は、賑わいと暮らしは決して対立するものではなく、むしろお互いを支え合えるものだと信じています。

再生のヒントは「暮らし」のなかにある

全国の地方都市を見渡すと、商店街再生の成功例には共通点があります。それは、「観光客を呼び込む」ことよりも先に、「地元の人が通いたくなる場所」をつくっているということです。

小樽にも、素晴らしい芽がすでにあります。花園や稲穂のあたりでは、若い世代が古い建物を活かしたカフェやギャラリー、小さな工房を開き始めています。先日お話を伺ったある若い店主さんは、「小樽の建物の美しさに惹かれて移住してきた」とおっしゃっていました。小樽の街並みそのものが、新しい担い手を呼び寄せる力を持っているのです。

「小樽には、他のどこにもない『時間の層』がある。この街で商売をすることが、そのまま文化を受け継ぐことになる気がしています」

この言葉を聞いたとき、私は胸が熱くなりました。歴史的建造物の多さ、港町ならではの空気感、坂道から見える海——これらは観光資源であると同時に、「ここで暮らしたい」「ここで働きたい」と人を惹きつける力でもあるのです。

行政ができること、市民だからできること

では、具体的に何をすべきか。私は市議会議員として、以下のような取り組みを進めていきたいと考えています。

1. 空き店舗情報の「見える化」と流通促進

「借りたい人」と「貸したい人」がうまく出会えていない現状があります。市と商工団体、不動産関係者が連携し、空き店舗の情報を一元的に把握・公開する仕組みづくりを提案していきます。所有者の方々の事情にも配慮しながら、丁寧に対話を重ねることが大切です。

2. 小規模な出店・開業への支援の拡充

いきなり本格的な店舗を構えるのはハードルが高くても、週末だけの出店や、間借りでの開業なら挑戦できるという方は多いはずです。チャレンジショップ的な仕組みや、改装費の一部補助など、「はじめの一歩」を後押しする施策を厚くしていく必要があります。

3. 「歩いて暮らせる中心部」への再設計

高齢化が進むなかで、車がなくても日常の買い物や通院ができる街の形をどう守るか。これは福祉の問題であると同時に、商店街の存続にも直結します。公共交通との連携、歩道の整備、小さな休憩スポットの設置など、「歩きたくなる街並み」を少しずつ整えていきたいと考えています。

私が大切にしたい三つの視点

  • 「残す」だけでなく「活かす」——歴史的資産を今の暮らしに結びつける
  • 「大きな一発」より「小さな積み重ね」——地道な取り組みの連鎖を重視する
  • 「行政主導」より「市民協働」——主役はあくまで地域で生きる皆さん

4. 商店街と地域コミュニティの再接続

かつて商店街は、お祭りや子どもの見守り、災害時の助け合いなど、地域コミュニティの中心でもありました。商店街振興組合、町会、学校、福祉施設が緩やかにつながる場づくりを支援し、「買い物をする場所」を超えた機能を取り戻していきたい。これは、お金の話だけでは解決できない、「人のつながり」の話なのです。

小樽を愛するすべての人へ

私はこの街で育ち、この街の空気を吸って大人になりました。冬の夜、雪に覆われた街灯の下を歩くとき、潮風が運河から吹き上がってくるとき、お店の方と交わす何気ない挨拶のなかに、この街の豊かさを感じます。小樽は、観光パンフレットに載っている風景だけでできているのではありません。そこに暮らす人々の営みが、この街を小樽たらしめているのです。

商店街の灯を絶やさないということは、単に経済政策の問題ではありません。それは、「どんな小樽を次の世代に手渡したいか」という、私たち一人ひとりへの問いかけでもあると思うのです。

最後に、皆さんにお願いがあります。もし今週末、どこかにお出かけになるのでしたら、少しだけ回り道をして、ふだん通らない商店街の一本道を歩いてみませんか。気になるお店に入ってみる、店主さんと一言交わしてみる。それだけで、街はほんの少し元気になります。

私も議会の内外で、現場に足を運び、皆さんの声に耳を傾け続けます。小樽の未来は、きっと小樽を愛する人々の手の中にある。私はそう信じています。

どうかこれからも、この街のことを、一緒に考えていただければ幸いです。

中村よしひろ

中村よしひろ

小樽市議会議員

1972年小樽市生まれ。市民の声を市政に届けるため、日々議会活動と地域活動に取り組む。小樽の歴史・文化・自然を愛し、住み続けたいまちづくりを目指している。